TCFD提言への対応

1.目的

当社グループは、気候変動がサステナブルな社会の実現にあたっての重要課題の1つであると認識しており、気候変動による影響の評価と対応策の検討が、当社グループの持続的成長とサステナブルな社会の実現に資するものと考えています。それを受け当社グループではTCFDガイドラインに即したシナリオ分析とそれを受けた対応策の検討の上、その取り組みについて情報開示を進めるとともに、経営の強靭化とサステナブルな社会の実現に貢献してまいります。

2.ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティ委員会が気候変動を含むサステナビリティに関する重要課題を統括管理しています。気候変動課題については、当委員会下に分科会としてTCFDチームを設置し、当社グループにおける気候変動による影響の評価及び管理体制の検討を行っています。TCFDチームでの審議内容はサステナビリティ委員会を通じて原則年1回の頻度で取締役会へ報告の上、取締役会においてその取り組み状況の監督及び指導、重要事項の決議を行っています。

3.戦略

当社グループでは、気候変動による自社事業への影響評価手法として、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表するシナリオを参考に、以下の前提条件に基づいた将来2030年時点における影響についてシナリオ分析を実施しました。

4℃シナリオ 1.5℃シナリオ
気候変動対策に関して現行の政策規制以上の取り組みはなされず、産業革命期対比で今世紀末までに世界の平均気温が4℃程上昇し、異常気象災害をはじめとした気候変動による直接的な影響が拡大すると仮定したシナリオ 脱炭素化への移行に向けた取り組みが活発化し、2050年までのカーボンニュートラル達成を目指して政府による政策規制、技術革新、消費者の嗜好変化などが進むと仮定したシナリオ
(参考シナリオ)
IPCC第5次評価報告書(AR5) RCP8.5
IEA WEO2021 STEPS
(参考シナリオ)
IPCC第5次評価報告書(AR5) RCP2.6
IEA WEO2021 APS、NZE2050

4℃シナリオにおける分析では、異常気象災害によるサプライチェーンの寸断や直接的な被害が想定され、洪水発生による直接的な被害額や営業停止に伴う損失については定量的に分析を行い、当社グループの財務を圧迫し得る重要なリスクとして評価しています。また、定性的な分析にとどまるものの、平均気温の上昇による空調利用の増加や原油価格の成り行き的な需要拡大による高騰から、主に物流コスト面でのリスクとなる可能性を認識しています。しかしながら、こうした異常気象災害の発生や平均気温の上昇から、消費者における防災関連商品の需要増加も予想され、ECサイトの利便性向上や防災、熱中症対策など気候変動影響に対する適応商材の拡充が、当社における事業機会のみならず、持続可能な社会の形成に資する社会貢献の一端を担うものと考えています。

1.5℃シナリオでは、脱炭素化への移行促進のための様々な政策規制が導入され、例えば現行のリサイクル関連規制の強化等により対応コストが発生することが想定されます。特に炭素税が導入される場合については、当社グループにも財務的影響を及ぼし得ると試算、分析しています。また、当社グループで使用するエネルギーの多くが電力を占めていますが、再生可能エネルギー電力への切り替えにより購買電力価格が高騰することも予想されます。その一方で、消費者間ではエシカル消費などの新たな購買嗜好がより活発化し、当社グループの株式会社ミスターマックスが展開する環境配慮型プライベートブランド商品をはじめとし、環境に良い商品の拡販が当社グループの事業機会かつ社会全体の脱炭素化に資する取り組みになるものと考えています。


要因と事象
評価
4℃
シナリオ
1.5℃
シナリオ




カーボン
プライシング
炭素税の導入をはじめとする事業運営コストの増加

資源循環
規制の強化
各種リサイクル法規制の強化やプラスチック利用規制の導入による対応コストの発生

エネルギー
コストの変化
再生可能エネルギーへの転換に伴う購買電力コストの増加
化石燃料価格の高騰に伴う輸送コストの増加


消費者
行動の変化
エシカル消費の拡大によるPB製品を含む環境配慮型商品の需要拡大




異常気象
災害の激甚化
自社拠点及び物流網の被災による被害規模の拡大

平均気温の
上昇
気候変動への適応商材に対するニーズの拡大
災害及び気温上昇による外出機会減少によるECサイト利用者の拡大

空調コストの増加

<影響度評価の指標>
大:2021年度の営業利益実績に対して、±3%以上の財務影響を及ぼす可能性があるもの
中:2021年度の営業利益実績に対して、±3%未満の財務影響を及ぼす可能性があるもの
小:財務的な影響は軽微か、影響なしと評価したもの

なお、これら分析に対する個別具体的な取り組みについては、CO2削減への取り組み、商品における環境への取り組み、省資源化、リサイクルの各項でも説明しております。今後はこれらの取り組みに対し、KPIを設定の上、更なる対応策を検討し、気候変動に対するレジリエンス性を確保し、脱炭素化をはじめとした持続可能な社会の実現に向けて引き続き貢献してまいります。

4.リスク管理

気候変動に関するリスクの認識及び評価にあたっては、サステナビリティ委員会の分科会であるTCFDチームが中心となり各関係部署と討議し、その内容をもとにTCFDチームがシナリオ分析の手法等を通じてリスク及び機会の評価・特定をしています。取締役会はサステナビリティ委員会からの報告を受け、当社グループにおけるリスク管理運用についての決議を行い、サステナビリティ委員会がその管理体制を検討する体制を整えています。なお、現在当社グループが特定しているサステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)及びその評価プロセスについては、マテリアリティ(重要課題)に掲載しています。

リスク管理

5.指標と目標

当社グループではCO2排出量の抑制及び削減に向けて、Scope1、2の把握及び複数のKPI設定を行っています。当社グループの事業は店舗内のPOP、買い物かごやハンガーなど備品に多くのプラスチック素材を使用しているほか、複数店舗の運営によるエネルギー消費量の増加、商品の輸送から排出される廃棄ガスなど、直接的・間接的にかかわらずCO2排出を伴う活動が複数あり、その活動ごとに個別目標を設定しています。Scope1、2及び各設定目標については、以下に記載の通りです。

  • 2030年度までにScope1、2におけるCO2排出量を2013年度対比で50%削減する。​​
  • さらに、2030年以降も脱炭素に取り組み、2050年をめどにScope1、2におけるカーボンニュートラルを目指す。​

(単位:t-CO2

スコープ 排出量 前年比(%)
2022年度
Scope1 877.4 101.1
Scope2 34,772.6 88.6
Scope1+2 35,660.0 88.9
指標 目標 現在
(2022年度)
2030年 2025年
店舗におけるプラスチック備品使用抑制による、 CO2排出量の削減率
(2021年対比)
50.0% 20.0% 【プラスチック
 備品使用量】 107.1t
【CO2排出量】 496.0t
資源の店頭回収 店舗実施率
(店数対比)
100.0% 30.0% 1.8%
サステナブルなPB・SB商品の
PB内の売上高構成
30.0% 10.0% 3.3%
自家消費型の太陽光発電設備設置件数
(全事業所対比)
30.0% 10.0% 0.0%
自然冷媒冷什器の導入
(全事業所対比)
25.0% 10.0% 0.0%
社用車(本部・店舗)の
エコカー導入率 (全事業所対比)
100.0% 15.0% 0.0%
売上原単位あたりのCO2排出量の削減
(ドライセンター配送:2013年対比削減率)
23.0% 20.0% 18.8%